チタンを用いて表面を生体適合に必要な形状に制御された歯科用インプラント部品(代表例は人工歯根)を製作するための革新的な造形法として、レーザ光造形装置を用いた造形手法とその造形物の機械的特性を研究して、以下の成果が得られた。 1.レーザ光造形法の開発 レーザ出力、レーザ走査速度、積層ピッチ、ハッチングピッチ(走査間隔)を加工パラメータとして、チタン粉末の焼結を行い、マクロとミクロな形状と気孔率の測定を行った。その結果、 (1)チタン粉末に与える単位体積当りのエネルギ量が増加するのに伴って、焼結部の表面形状にはレーザ走査に伴う球状、くびれ、直線の形状が生じるようになり、良好な加工面となる。 (2)ハッチングピッチの減少による焼結部の幅や高さの変化は、2列目以降には生じない。 (3)焼結部形状と気孔率の間には強い相関がある。 (4)上記の焼結部の形状データを用いて焼結条件から気孔率の予測方法を考案した。レーザ出力とハッチングピッチの関係図に、予測に基づく等気孔率線を加えると所望の気孔率の造形のための加工パラメータを容易に選択できることを示した。 以上の成果を基に、外側が密で内部がポーラスな造形物(人工骨モデル)が造形できた。これより、本造形法によって、インプラント部品の加工が可能である。 2.造形物の摩耗試験 上記のチタン粉末の焼結部品の引張り試験、硬さ試験及び摩耗試験を行った。その結果、気孔率と機械的性質の間には相関関係があること、また焼結面の気孔に侵入した液体(水)の潤滑作用によって焼結部品の耐摩耗性が向上することがわかった。
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