研究概要 |
潤滑剤分子の配列構造に基づく分子層間摩擦を測定するためには,分子層の表面に接して摺動させる機構,および超低荷重化にともない顕在化する凝着力(法線力)と微小化する摩擦力(接線力)を測定する2軸の力検出機構が必要である.接触摺動機構としては,pin-on-disk方式を採用することとし,力検出機構の構成を中心にして試作を繰り返しながら,2軸力の検出機構の感度や再現性の向上を進めた.また検出した摩擦力の連続データの採取,load/unload操作の自動化,荷重増加ステップの自動化などの操作プログラムを作成した. 1)凝着力検出機構 ヘッドディスクインタフェース(HDI)への適用を想定して,設定可能荷重上限10mN,凝着力検出感度0.01mNを確保することとして,検出機構を設計した.変位拡大機構を装備したピエゾアクチュエータの50μmの稼働範囲において,摺動ピンの背面の変位をレーザ変位計で測定する方法により,接触開始点・分離開始点を同定して,再現性の分散0.02mNを実現した.変位拡大機構の蛇行的な送り,これに伴うレーザ反射面の擬似的変位などに問題が残されている. 2)摩擦力検出機構 摩擦の検出は,接線方向に可撓性を付与した起歪体の変位を高感度の静電容量変化の変位計で測定する方法を採用し,12000point/cycle(約6μm間隔)の分解能で100cycle分の連続データ採取が可能なシステムを構築した. 3)凝着力・摩擦力の測定精度 PFPE潤滑膜厚さ2〜6nm,荷重範囲sub-mN領域において,試行的な実験を行い,凝着力に関しては,膜厚さや潤滑剤の種類に依存せず,おおむね0.2mN程度であるが,摩擦力に関しては,これらに依存して,大きさが0.02〜0.08mNに及ぶとの結果を得た.しかし試料交換時の再現性に問題が残されており,定量的な比較は今後の課題である.
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