研究概要 |
本研究では,低密度領域やマイクロ・ナノデバイス中の流れ場に代表される高クヌッセン数領域において適用可能な感圧/感温塗料(PSP/TSP:Pressure/Temperature Sensitive Paint)を実現するため,単分子膜(Langmuir-Blodgett:LB膜)の生成技術を応用した高秩序ナノ薄膜PSP/TSPの開発を行うとともに,それらを圧力孔や熱電対などの計測手法が適用できないマイクロ・ナノデバイスの圧力・温度計測に適応することを目的とする. PSPは固体表面に入射する酸素分子による発光分子の消光作用に基づいているため,PSPの発光強度は固体表面に入射する酸素分子数流束に依存している可能性がある.単位時間および単位面積あたりの表面上に作用する分子の運動量流束である圧力は分子数流束および速度の両者に依存するが,クヌッセン数の高い領域では固体表面近傍における流体の巨視的速度は0とならないため,分子数流束と圧力が必ずしも一対一で対応しない.本研究では,PSPの発光強度と分子数流束の関係を明らかにし,高クヌッセン数領域で重要となる分子数流束の計測法としてPSPが有用であることを示した. 従来のPSPは膜厚,表面粗さ,発光分子の凝集による空間分解能の低下等の問題が存在するためマイクロ・ナノデバイスへの適用が困難であり,これらの問題を解決できる新たなPSPの開発が望まれている.本研究ではLangmuir-Blodgett(LB)法によってPSPを分子膜化したPSMF(Pressure Sensitive Molecular Film)を作製し,そのPSMFの特性を評価することによって,マイクロデバイス周りの流れ場計測に適用可能であることを示した.このPSMFを適用するためのマイクロデバイスの製作も進行中である.
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