研究概要 |
近年,分散型電源に適用される中容量から小容量の発電機の高性能化が望まれている。本研究は,小型高性能発電機の開発を目的として,筆者の着想による永久磁石を併用したリラクタンスジェネレータ(以下PMRG)の開発を行ったものである。平成17年度は,単相PMRGの動作機構を解明するとともに,小型の単相PMRGを製作して所期の動作を確認した。さらに,有限要素法を利用して三相PMRGの基本設計を行った。これらの研究成果に立脚し,平成18年度は以下の事項について検討を行った。 1.三相PMRGの試作と特性評価:前年度の検討結果に基づいて,出力が500W程度の三相PMRGを試作した。極数は,三相機では最も基本的な固定子6極-回転子4極とし,磁石にはNd-Fe-Bを用いた。次いで,試作したリ三相PMRGの回転子をサーボモータで駆動して,無負荷時ならびに負荷時の出力電圧ならびに電流,トルク,回転数を詳細に測定した。その結果,試作機の効率は約92%と良好であること,単相PMRGで問題になったコギングトルクも実用上問題が無いほど低減されることが明らかになった。これは,無負荷時に固定子と回転の極間で生じるコギングトルクが,三相構造にすると互いにキャンセルされるためである。これらの実測値と有限要素法による計算値は良好に一致し,PMRGの諸特性が有限要素法によって精度良く推定可能であることが明らかになった。 2.多極PMRGの検討:有限要素法によってPMRGの多極化について検討を行った。すなわち,固定子と回転子の極数が12極-8極,16極-12極,18極-12極について特性算定を行った。その結果,多極化によって,出力密度や効率が向上すること,極数には最適な組み合わせがあることなどが明らかになった。 3.アウターロータ型PMRGの検討:用途によっては,固定子が内側,回転子が外側のアウターロータ構造が有利な場合もある。ここでは有限要素法に基づいてアウターロータ型PMRGについて検討を行い,その基本構造を明らかにした。 4.PMRGの磁気回路モデルの構築:筆者が提唱している「磁気回路法による回転機の解析手法」に基づいて,PMRGの磁気回路モデルを作成した。これは,有限要素法では困難な,PMRGの動特性や過渡特性の定量解析ができるもので,PMRGを風力発電機や小水力発電機として応用する場合に有用なものである。 以上より,PMRGの基礎特性が明らかになるとともに,多極化による高性能化の見通しが得られた。さらに,分散型電源システムの開発に有用なPMRGの磁気回路モデルを構築することができ,本研究の目的はある程度達成されたものと考えられる。これらの成果は電気学会全国大会,日本応用磁気学会学術講演会,およびパワーエレクトロニクスと電気機器の国際会議(EPE-PMRCおよびICEM)において発表した。
|