研究概要 |
従来の磁気浮上技術は,機械要素の代替となり得る程の十分な支持性能(高支持剛性,ロバスト性)を目指しており,必然的に浮上時のギャップは狭く,漏れ磁束を低減し一定位置で安定となるよう設計されていた。本研究は上記の磁気浮上研究の発展経緯とは大きく異なり,広い空隙距離,広い制御範囲(制御方向へ上下動)を最優先するという逆転の発想に基づく磁気浮上技術であり,浮上体の三次元移動を可能にする磁気浮上システムの開発を最終目的としている。 本年度は浮上体を制御方向(上下方向)に非接触浮上移動させるシステムの開発,システム周辺の磁場変化の影響調査,線形・非線形の各補償器による浮上状態の確立,二次元移動装置の製作と浮上移動シミュレーションを実施した。具体的には,まず制御電磁石の設計として長空隙距離で磁気浮上を実現するための特殊な制御電磁石形状を提案し,ネオジ系永久磁石による主磁束と棒状電磁石による副磁束を利用し開磁路の制御電磁石を製作した。これにより比較的小型な電磁石で十分遠方まで磁束が行き届くことが磁場測定および解析により示された。また開磁路構成の影響と浮上性能の評価を行い,電磁石周辺に強制的に磁場歪みを与えた場合でも遠方の浮上体(球形磁石)は安定浮上を続け影響は小さいという結果を得た。浮上実験では,浮上体を制御電磁石の磁極より遠方約45mmでの安定浮上を確立し,上下約6mmの移動を実現した。使用した補償器は最適サーボ系とモデル追従型サーボ系でありいずれも線形補償器であったが,実際には可動範囲の増大に伴う非線形性を非線形補償器で制御することが望ましい。そこで現在,モデル規範型適応制御系,NN制御系での浮上シミュレーションおよび浮上実験を実施継続中である。また,二次元移動用のU字型制御電磁石を製作し,浮上シミュレーションと磁場測定の双方から浮上移動可能性と浮上移動エリアを調査している。
|