研究概要 |
走査ホール素子マグネトメトリを用いた各種鋼材の非破壊磁気診断に関する研究を実施し、以下の成果を得た。 1.丸棒鋼材用マグネトメトリの製作と低炭素鋼SM400Bの非破壊診断に向けて 丸棒鋼材の表面磁場垂直成分を静的条件下で回転角θ及び長手座標xの関数として計測しx-θ面上に磁気イメージとして表現できる走査ホール素子マグネトメトリを製作した。これを用いて、電力分野で広く使われる低炭素鋼SM400Bの疲労進展が磁気イメージに及ぼす影響を研究した。疲労付加前は、θ=一定の自発磁場は座標xに追随しないが、x=一定の磁場はθに強く依存するため、結果として磁気イメージは横縞模様となるが、疲労進展に伴い、磁気イメージは横縞模様から縦縞模様に変化する。疲労付加試料の表面に多数のすべり線が観測されたため、この変化はすべり線からの漏洩磁束によると考えられる。なお、疲労付加は回転曲げ疲労試験機及び軸荷重疲労試験機を用いて行い疲労状態の異なる2系列の試料を得たが、疲労進展に伴う磁気イメージの変化には強い類似性が確認された。研究成果は国際会議12th Int.Conf.on Composites/nano Engn.(Aug.1-6,2005,Tenerife)で発表するとともに、平成18年度電気学会全国大会(論文集[2]、2-134、pp.150)で口頭発表した。 2.マグネトメトリを用いたステンレス鋼の亀裂進展性の評価 電力用鋼材であるオーステナイト系ステンレス鋼SUS304平板を用いて、磁気情報から亀裂進展製の有無を判別できる可能性を追究した。その結果、亀裂周辺で応力誘起マルテンサイト変態に起因する大きな磁場の変化が観測され、さらに磁場分布と応力拡大係数Kとの間に相関性が示された。これは、応力拡大係数Kの大きさによりマルテンサイト相へと変態する量が変化したためだと考えられ、亀裂進展性の評価に向けての可能性を示唆している。研究成果は、平成17年度電気関係学会東海支部連合大会講演(講演論文集0-007)、平成18年度電気学会全国大会(論文集[2]、2-135、pp.151)で口頭発表した。 3.マグネトメトリを用いた鉄道用レール鋼材中の欠陥検出の可能性 使用済み鉄道用試験レールの頭頂面長手方向でのホール素子走査の結果、フランジ側頭頂部のコーナー部に磁気集中部が見られた。光学顕微鏡観察の結果、微小亀裂と剥離が確認され、また磁気の乱れ部と欠陥集中箇所が対応しているため、欠陥検出を自発磁場の分布の乱れから実施できる可能性が示された。研究成果は学術論文にまとめJ.Soc.Mat.Sci.Japan「材料」(54巻7号792頁)で発表した。
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