本研究は、誘電体及び金属のppb/℃レベルの極微小な線膨張係数を計測し、2次元分布を計測できる装置の基礎、及び、プロトタイプの開発を最終目的として行うもので、本年度は以下の研究を行った。 1.プローブと検出系の作製 測定原理として走査型非線形誘電率顕微法(SNDM)の技術を用いたプローブおよび検出系、制御ソフトを試作した。 2.映像電荷法による感度の見積もり 熱張を計測するために、線形誘電率を用いる場合と非線形誘電率を用いる場合それぞれについて映像電荷法で感度を見積もり、いずれの場合も理想的には十分な感度を有していることを確認した。実際には浮遊容量の影響が大きいため感度の限界についての実験的な検討は今後行わなくてはならない。 3.熱膨張の観測 基礎実験として、ヒーターを用いて加熱する方法で、線膨張係数約10ppm/Kの試料において、0.76Wの熱を10Hzの周期で与えたときに、それに応じて十分な出力を得られることを確認した。 4.光を用いて試料に温度変化を与える機構の作製 チョッピング周波数を上げることで空間分解能を上げることができるため、試料に温度変化を印加するための熱源に光を用いる機構を作製した。 5.2次元走査機構の作製 熱膨張の2次元分布を計測するための走査機構、および制御ソフトを作製した。
|