研究概要 |
通信システムにおける被変調信号の復調/復号は従来時間領域で行っていたが,周波数領域(スペクトル空間)においても実現可能なことを明らかにした.同期検波により復調した信号は,離散フーリエ変換(DFT)によりNシンボル毎にスペクトル空間のN次元複素ベクトルに変換され,用意したテンプレートベクトルとの内積が最大となるベクトルを送信信号として復号する.新たに提案したこの復号法は,次の2つの特徴を有する.すなわち,(i)DFT演算は計量同型写像であるため時間・周波数領域間で信号間距離が保存される.(ii)内積の最大値を求めることは受信複素ベクトルとテンプレートベクトルとのパターンマッチングと等価である.これに基づき,受信信号の最尤復号が実現できることを理論的に明らかにした.実際,本手法によりQPSK信号を復調した結果,理論的に得られる最適なビット誤り率(BER)特性が得られることをコンピュータシミュレーションにより確認した.本復調法はこのほかに,信号スペクトル間の2乗ユークリッド距離に基づく符号判定を行うため,変調方式に依存しない汎用的な復調器及び誤り訂正ブロック符号の種類に依存しない復号器を実現できる特長を有する.ただし,時間領域での復調方式に比べ演算量が膨大になるため,演算量の削減法を引き続き研究中である.以上の研究結果をまとめ,電子情報通信学会のRCS研究会に報告した.また,本復調法で前提としている同期検波のために必要となるキャリア同期方式について,タイミング同期用のプリアンブル信号を利用して,スペクトル空間において周波数オフセット及び位相オフセットを推定する方法を提案し(来年度の研究テーマの一つ),基礎動作原理を確認すると共に特許を出願した.
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