研究概要 |
標本化ファイバブラッググレーティング(以後SFBGと略)による光ウェーブレットの実装方法を検討した.時間幅τのウェーブレットを標本化間隔Tsで標本化した場合,標本化間隔に対応してFBG間隔Ls=cTs/2ncore, FBG長Lg<LsのSFBGを用いる.ここでcは真空中の光速,ncoreは光ファイバのコアの屈折率である.各FBGの反射率はウェーブレットの標本値と対応させ,負の反射率は反射率の符号が反転するFBGの直前の間隙部の長さを,FBGのブラッグ波長の1/4の奇数倍として位相差φを与えることで実現する(この反射率・位相差構造を反射率プロファイルと呼ぶ).ウェーブレットのスケーリングは,ウェーブレットの幅τの増減とFBG数の増減により実現する.このSFBGに被解析信号を入射すると,ウェーブレットと被解析光信号の畳み込み結果が反射される.そこで,光サーキュレータを介してSFBGからの反射光を観測することで,全光処理による高速光信号のウェーブレット解析結果を得ることができる. これまでに,所望の特性のSFBGを自在に作成できるように,従来から所有するFBG作成環境の増強を行った.具体的には,FBG作成に使用する位相マスクをピエゾ素子によって精密な位置制御を可能とした.現在,この装置の基礎データ取得に向けた実験を行っている.また同時に,旧来の作成環境において様々な反射率プロファイルを有するSFBGを作成し,SFBGの反射率プロファイルと入射した光信号の畳み込み処理の原理確認実験を行った.その一例を述べる.この例では,反射率プロファイルはガウシアンモノサイクルパルス(パルス幅約200ps)とし,1)短光パルス入射時のSFBGの時間応答,2)SFBG出力光(200psのガウシアンモノサイクルパルス)を同一構成のSFBGに入射した場合のSFBGの時間応答,を観測した.いずれの実験も成功し,SFBG反射プロファイルと入射光信号の高速畳み込み演算処理が可能であることを確認し,SFBGを用いた全光処理による高速光信号のウェーブレット解析が可能であることが分かった.今後は様々なウェーブレットに対応したSFBGの実装とその評価に取り組む予定である.
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