研究課題
ポストテンション式プレストレストコンクリート(以下PC)はりの塩化物イオンによる劣化性状を明らかにするために、PC鋼材を陽極に、アクリル製プール底面に敷いたチタンメッシュを陰極に設定し、塩水(質量濃度で5%)を満たしたプール中にはり供試体を入れて、通電することによる腐食促進試験を行い、グラウトの充填率、グラウトの塩分量、シース径などがシース、PC鋼材の腐食に及ぼす影響、ひび割れ性状の違いを実験的に明らかにした。また、所定期間通電後、載荷実験を行い、上記要因が耐荷力低下等に及ぼす影響も明らかにした。さらに、実構造物との関連を明らかにして、本実験手法をPC橋梁の劣化シミュレータとして開発した。その結果、以下のことが明らかとなった。1)シースによる腐食ひび割れに関しては、グラウトの充填率の高いものほど卓越して発生し、アンボンド供試体は鋼材の防食には問題があるが腐食ひび割れは発生しない。これは、腐食による膨張圧がシース内の空隙によって緩和されることにより、コンクリートに引張力が発生しないからである。2)錆汁発生の有無によって腐食ひび割れ幅に変化が生じる。3)電流一定の揚合、シース径が大きければ流れる腐食電流は小さくなり腐食量は減少するため、腐食ひび割れ幅は小さくなる。4)PC鋼材の劣化には各腐食要因以上に、拡大した腐食ひび割れから供給される酸素及び水分が与える影響が大きい。5)劣化過程を解析的に明らかして、本実験手法が実PC橋梁の劣化シミュレータとしてある程度適用できることが明らかとなった。
すべて 2005
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Proceedings of the Japan Concrete Institute Vol.27,No.1
ページ: 967-972
コンクリート工学年次論文報告集 Vol.27,No.1
ページ: 661-666