研究概要 |
本研究は,社会基盤の1つとしてダム構造物を対象に,撤去も含めたその将来的な在り方について検討し,社会基盤の再構築に関する手法を研究することを目的とする。 今年度は,その第一段階として,諸外国におけるダム撤去の事例を整理した。その結果,諸外国においては,高さ15m以下の小規模ダムを対象とした撤去の事例は数多くあるものの,日本で規定しているような15m以上のダムを対象としてものはほとんどないということが明かとなった。また,日本の急峻で急流河川が多いという国土的な特徴からも,風水害に対する治水のためのダムの必要性を無視することは難しく,単に自然環境への回帰,河川環境の回復を目的としてダム撤去を論じることの危険性についても指摘した。このような観点から,一つの事例として,ダムの構築によって発生している濁水問題について,あるダムを対象に,その自然環境への影響について,貯水池上流域の状況を調査し,どのような問題が発生しているかを定量的に明らかにし,開発と環境の調和について議論した。 さらに,日本,特に九州のダムの概況について,ダム年鑑を基に,整理を行った。これには,地理情報システム(GIS)を用いて,ダムの位置,形式,規模,構築年などの属性を入力し,ダムの空間的な配置状況を整理するとともに,その周辺の地形,土地利用などの各種地理情報も同時に整理することで,現存するダムの状況について定量的に分析を行った。この結果は,次年度に行う予定であるダムポテンシャルマップの作成のための準備データとして用いる予定である。
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