2000年鳥取県西部地震(M_J7.3)の際、震央近くの賀祥ダムでは最大加速度がダムの下部で531gal、上部で2051galの強震記録が得られたが、重力式コンクリートダムの本体は無被害であった。この強震記録を積分して変位を算出した結果、ダム上下での変位時刻歴は水平面上での軌跡が互いに系統的なずれを示すとともに、地震後の残留相対変位量がプラムライン(下げ振りたわみ計)による計測値と有意な相違を示した。そこで現地調査結果をもとに、強震記録の修正を行うとともに、数値シミュレーションにより算定した震源域での地震時地盤変位の時刻歴と強震記録から算定されたダム上下での地震時変位時刻歴をもとに、ダム下部の強震計設置地点での6成分変位を定量的に評価した。 また、1997年鹿児島県北西部地震の際、ダム内部の複数観測地点で良好な強震記録が得られている鶴田ダム(高さ107m、重力式コンクリートダム)に現地調査を行い、地震計方位の測量と、正・逆プラムラインの測定状況を視察した。その結果、このダムの地震計方位が資料に公表されているものと、かなり差異があることが判明した。 さらに、2004年新潟県中越地震の震源域で観測された強震記録を積分して、地盤の加速度から変位を精度よく算定する手法を検討した。震源域では、地盤の変位成分に回転成分が含まれ、地震後にも地震計の傾斜が残るため、従来の方法では正確な地盤変位が算定されない。この傾斜成分を除去して、積分精度を高める実用的手法を提案し、公表する準備を進めている。
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