開端鋼管杭を砂質土地盤に貫入した場合、鋼管杭内部の土粒子と鋼材が摩擦力を発揮するために管内の圧力が増加し土粒子が密に詰まった状態(プラグ)を形成することがこれまでの研究で報告されている。このプラグの圧力により、切り込みを入れた開端杭先端は外側に拡大し、支持層との接地面積が増加するために先端支持力も増加するのではないかと考えられ、自律的に鋼管杭先端を拡大させる新たな杭基礎工法の開発を本研究の目的としている。 第一段階では剛性が比較的小さいアルミニウム缶の先端にスリットを入れ、極めて緩い砂地盤に貫入する試験を行った。アルミニウム缶の先端長は40mmで一定とし、分割数及び貫入量を変化させて拡大のメカニズムや各パラメータの影響について検討を行った。 第二段階では外径30mm肉厚1.0mmの模型鋼管杭を使用し、相対密度80%で上載圧が作用する密な模型地盤に模型杭を貫入する試験を行った。試験内容を大きく分けるとすれば、模型杭にスリットを入れずに上載圧をパラメータとして貫入試験を行うシリーズ、模型杭先端にスリットを入れて貫入試験を行いスリットが支持力に与える影響について調べたシリーズに分かれる。さらにスリットを入れるケースは分割数、先端長等を変化させてその影響についても調べている。その結果スリットを杭径の1/3(10mm)入れることによって支持力はスリットを入れない場合と比べて約44%増加するという結果が得られた。10mmのスリットを入れることによって引き抜き抵抗も約47%増加するが、最大引き抜き抵抗を発揮するまでに杭径の約130%の変位を要することから、スリットを入れない場合と引き抜き抵抗発現メカニズムが異なるのではないかと考えられる。 第三段階は第二段階で得られた貫入試験結果を元に塑性解析によって杭先端拡大圧の予測式を導く試みを行った。
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