研究概要 |
本年度は大陸棚上を流下する乱泥流の数学モデルを構築するとともに,乱泥流発生に影響を及ぼすと考えられる海底表層地盤の物理特性と力学的特性の現地調査の実施計画を立てた.また地震の前後において実施した海底地形調査のデータを解析した結果,乱泥流の発生を部分的に裏付ける結果が得られた. 上流側で緩勾配であり下流側で急勾配な地形を想定して乱泥流の数値シミュレーションを行った結果,リチャードソン限界点において,あまり大きな層厚や小さな層厚の乱泥流は存在し得ないことが明らかになった.また限界条件を満足する乱泥流は上流に向かうにつれて非常に大きな流速を持つようになる.したがってな乱泥流はリチャードソン限界点からあまり遠くないところで発生していることが示唆された. JAMSTECが保有する潜水艇(ハイパードルフィン)を利用して,海底表層地盤上で表層土砂のサンプリング,原位置試験,海底流況調査を平成18年度に実施する予定である.この調査計画立案のための情報収集および意見交換を,JAMSTEC(横須賀本部潜水艇調査チーム),独立行政法人産業技術総合研究所(地質情報研究部門),誠研舎(地盤調査機器メーカー)において行った.その結果,1)調査対象海域は釧路沖の大陸棚縁とすること,2)潜水艇による海底表層地盤のサンプリングはMBARI式およびグラブ式とすること,3)潜水艇による海底表層地盤の原位置試験は,陸上でのコーン貫入試験を改良したものとすることなどを決定し,一部装置の設計および発注を行った. さらに,2003年十勝沖地震(MW8,0)の前後において実施した海底地形調査および反射法地震探査のデータを解析した結果,プレート境界付近の海底面形状や反射面の反射率が時間変化していることが明らかとなった.その振幅変化のパターンや余震の解析から,乱泥流が発生している可能性が高いことが明らかとなった.
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