研究概要 |
平成17年度では、分析用のデータベース構築と、地震の影響を受けた個人交通需要の発生特性を明らかにした。 まず、分析用のデータベース構築では、既遂の「平成13年の芸予地震」(以下、芸予地震)と「平成15年の宮城県沖を震源とする地震」(以下、宮城県沖地震)時の個人交通需要の調査データのデータクリーニングを実施し、本研究に耐えうるデータベース化した(芸予地震:899世帯3,333人、宮城県沖地震1,436世帯4,935人)。 次に、地震の影響を受けた個人交通需要の発生特性(どのように反応するのか)は、宮城県沖地震のデータ一部を用いて帰宅交通需要の発生特性を明らかにし、査読論文として評価を得た。 地震発生当日の帰宅交通需要は、鉄道交通を用いたトリップがあらゆる交通手段を、道路交通(乗用車,バス)のトリップが主に徒歩を代替手段としていたことが分かった。そのほか、帰宅交通需要の時間変動、各交通手段別のレスポンス内容など、幾つかの災害時交通需要発生の実態が明らかになった。 また、災害時における交通需要の発生特性を抑える上で、1つの概念になると思われる、交通需要の時間変動のプロセスと交通需要変動の3要素が確認された。とりわけ震災時の帰宅交通需要の時間変動は、本来の交通需要の「減少(収縮期)→増加(膨張期)→減少(収束期)」という一連の変動プロセスから生じており、「交通需要変動の3要素」(不動トリップ、遅れ浮動トリップ、早め浮動トリップ)によって形成されていたことがわかった。
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