研究概要 |
道路の計画・設計に対する現在の基本的な考え方では,交通需要の実態を調査し需要予測モデルに基づいて計画し,それを受けて道路幾何構造を設計する,それでも対応しきれない部分を交通運用・管理対策に任せる,という「需要追随型・一方通行型」の計画・設計論である.しかし都市部においては,交通需要は潜在化しており,このような考え方は論理的に破綻しており実態に合わない.また近年の公共投資抑制・社会資本の有効活用の方向性も加味すると,抜本的な新たな計画・設計の思想が必要とされている.本研究は,都市部における道路ネットワークの交通容量性能により顕在化する交通需要が制約される条件を明示的に考慮し,また道路幾何構造設計上の制約条件,交通運用・管理対策による交通性能の変動範囲を計画論の中に明示的に反映させ,道路ネットワーク全体を有効に機能させるために求められる計画・設計上の条件を理論・実証の両面から検討し,計画・設計論を構築・提案することを目的とする. 本年度は,ボトルネックにより交通容量が制約されることを明示的に扱った道路ネットワーク計画方法に関する理論的な検討を行い,道路設計上の条件の設定と信号制御パラメータなどの交通運用条件の設定が,ネットワーク計画にどのようにフィードバックされるべきか,基本的な枠組みを明らかにした.また,需要が潜在する混雑した道路ネットワークを対象とする場合に,設計・運用上の柔軟な改良余地を持つ将来計画の考え方を提示した.さらに,こうしたボトルネックの実際の事例として,特に今後わが国における都市部で重要となると考えられる往復2車線分離道路の交通容量の現地実態調査,およびその要因分析を行い,ボトルネック容量に関する実証的な調査検討を行なった.
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