研究概要 |
重金属の中で特に6価クロムは難溶化が困難で溶出し易く地下汚染域の拡大防止が必要である。6価クロム汚染土壌の不溶化処理にセメント系固化材を使用する方法があるが,セメント系固化材として普通ポルトランドセメントを使用した場合では,土質条件によってそれ自身からの6価クロムの溶出量が土壌環境基準を超える場合があることが明らかにされている。本研究の目的は,製鋼過程で発生する高炉スラグや製鋼スラグを利用して汚染土壌からの6価クロムを含む重金属の溶出を飛躍的に防止できる水硬性材料を開発することにある。6価クロムなどの重金属はカルシウムアルミネート水和物であるエトリンガイト(Aft相)及びモノサルフェート(AFm相)と反応し,水和結晶中に固定化される。本年度は,これらの水和物を多く生成させるため普通セメントを高炉スラグ微粉末で50%置換しセッコウ添加した水硬材を作製し,六価クロムを含有した各種土壌(砂質土,シルト質土,高有機質土)に混合添加した場合の溶出抑制効果を検証した。その結果,すべての土壌において高炉スラグ微粉末は溶出抑制に有効であり,さらにセッコウをSO_3換算で5%添加した場合,溶出が抑制されることを見出した。土壌条件から,6価クロムの溶出状況をみると,土壌がアルカリ性を有すると酸化還元電位が高くなり,6価クロムが溶出し易くなる。また,陽イオン交換容量ならびにリン酸含有量が多い場合は,水和反応に必要なCa^<2+>を土壌が吸着し易くなり水和を遅延させることが確認された。また,6価クロムは3価クロムと比較して,C-S-H系水和物の生成に対しては影響を及ぼさないが,カルシウムアルミネート系水和物の生成を遅延させることが明らかとなった。
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