本研究では、居住者が地球環境および住環境に対する意識を向上し、安全。健康・快適な住まいを自ら構築していく知識を得るため、住環境教育としての「住環境リテラシー」に関する基礎的研究として次の2点を中心に検討した。 1.住環境リテラシーにおける専門家と一般ユーザとの情報伝達手段としての図面の役割に着目し、アイマークレコーダを用いた被験者視線行動実験により、図面の認識について検討を行った。専門家と一般ユーザ(主婦・学生)の図面の見方の違いを解析した結果、一般ユーザが図面を迷走気味に見ている傾向を示した。また、アンケートにより住宅図面の見方と認識度を調べた結果、主婦はキッチンなどの機能面に関心が高かった。さらに、注視時間と図面認識度との関係を検討したが、明確な傾向は示されず、今後の検討課題となった。 2.居住者による住環境の測定を通して、居住者の住環境意識の定着の可能性について検討した。2006年夏季(8〜9月)と冬季(12月)に、それぞれ異なる1戸建て30戸を対象に、家庭用デジタル温湿度計を配布し、室内温湿度を意識することによる冷暖房装置の使い方の変化についてアンケート調査および実測を行った。温湿度計は、居住者の室内温熱環境に対する関心を誘うもので、目に付きやすい場所に設置するよう依頼した。同時に小型温湿度ロガーによる室内温湿度測定および住まい方。地球環境問題意識アンケート調査も行い、それらとの関係について検討を行った。温湿度計設置後では、夏季・冬季ともに温湿度計に関心を持った人は多く、特に夏季の調査では、温湿度計を見ることで冷房の設定温度を変えたと回答した割合は約40%であった。一方、冬季の調査では、温湿度計を見ているものの暖房の設定温度を変えた人はほとんどいなかった。また、冷暖房の使用時間については、ほとんどの人が変えなかったと回答した。
|