今年度はまちづくりファンドそのものだけでなく、支援システム構築に必要な要素としての、まちづくりファンドと一体化した担い手の育成、及びエンパワーメントの仕組みの調査も行った。 日本での調査として、各自治体で行われているまちづくりファンドについて、アンケート調査とヒアリング調査を行った。この成果を「地域協働型社会に向けた市・区による提案公募型まちづくり助成制度の発展経緯とその現状評価」として研究協力者とともに論文にまとめた。まちづくりファンドの現状として、ファンドにともなう市民のエンパワーメントのための周辺支援のさらなる必要性を明らかにした。 また、アメリカでの支援システムの調査として、住民による環境改善のためのまちづくりファンドであるファサード・インプルーブメント・ファンドについて、研究協力者とともに論文にまとめた。この事例からは、地域分権によるまちづくりファンドでの中間支援組織の可能性を明らかにした。 さらに、第三の比較軸として、英国のまちづくりファンドと支援システムの調査を行った。これについては、基礎となる英国でのまちづくりの理論を整理し、その上で英国的な、中央集権的な背景から生まれるまちづくりファンドについての分析を行っている。 まちづくりファンドの調査から明らかになったのは、諸外国における周辺支援の充実さと、中間支援組織の役割の大きさである。まちづくりファンドが資金というリソースを分配する、ということは同時にパワーも分権することであり、日本の現状において足りないのは、そういった、リソース分配と一体となった分権であった。
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