研究概要 |
BaTi_2O_5は高いキュリー温度(748K)および大きな誘電率を有することから、高温で使用できる非鉛系強誘電体材料として期待される。BaTiO_3では、BaサイトをSrやCa、TiサイトをZrやNb等の異元素の固溶置換によって優れた誘電特性を広温度域で持たせることが報告されているが、BaTi_2O_5についての報告例がない。そこで、本研究では、アーク溶解法によりSrOおよびNb_2O_5をそれぞれ添加したBaTi_2O_5多結晶体を作製し、誘電特性に及ぼすSrやNb元素添加の影響を調べた。 BaCO_3、TiO_2およびSrO、Nb_2O_5粉末を(Ba+Sr):Ti=1:2、Ba:(Ti+Nb)=1:2のモル比で秤量・混合した後,アーク溶解炉により溶融した。凝固体を1323Kの空気中で43ks熱処理した。試料の両面に金ペストを塗布し,交流インピーダンス法により誘電特性を評価した。周波数(f)を10^2〜10^7Hz,測定温度を293〜1073Kとした。 SrOおよびNb_2O_5を添加したBaTi_2O_5は、いずれも柱状多結晶であり、(020)方向に強く配向した。BaTi_2O_5へのSrOとNb_2O_5の固溶限はそれぞれ、10と2.5mol%であった。10mol%SrOの添加により、BaTi_2O_5の格子定数はa軸が1.6900から1.6874nm、b軸が0.3933から0.3928nm、c軸が0.9411から0.9394nmに減少した。異元素を添加しないBaTi2O_5の誘電率は約2000であったが、1mol%SrOを添加すると、誘電率の極大値が約3300に増大したが、SrO添加量の増加につれて減少した。異元素を添加しないBaTi_2O_5のキュリー点は743Kであったが、10mol%SrOの添加によりキュリー点が700Kに減少した。一方、5mol%Nb_2O_5の添加により、BaTi_2O_5の格子定数はa軸が1.6915nm、b軸が0.39375nm、c軸が0.94142nmに連続的に増大した。0.5mol%Nb_2O_5を添加すると、誘電率の極大値が約7000に増大した。 また、Nb_2O_5添加量の増加につれて誘電率のピークがブロードになり、減少した。2mol%までのNb_2O_5添加によりキュリー点が直線的に減少して443Kになり、さらに、5mol%のNb_2O_5によって、キュリー点はわずかに減少して413Kになった。2mol%以上のNb_2O_5を添加したBaTi_2O_5では、測定周波数の増加につれて誘電率は減少し、誘電率の極大値を示す温度は増加した。
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