研究概要 |
固相反応法により,δ単相であるBi_<1.4>Yb_<0.6>O_3固溶体を得た。空気中738℃と384℃でδ-Bi_<1.4>Yb_<0.6>O_3の中性子粉末回折パターンを測定した。リートベルト解析で得られた12個の構造因子を用いて、64×64×64のピクセルについてMEM解析を行った。REMEDYサイクルにより積分強度についての信頼度因子R_Iが384℃のデータでは7.73%から1.00%に、738℃では6.94%から0.84%に大幅に改善した。また、構造因子についての信頼度因子R_Fも384℃のデータでは5.08%から0.61%に、738℃では4.33%から0.58%に大幅に改善した。酸化物イオンは陽イオンに比べて複雑な不規則構造を示し、大きく広がっている。酸化物イオンは陽イオンとは反対の<111>方向にシフトしている。これは陽イオンと酸化物イオンの間の反発力に起因するものと考えられる。最も注目される結果は、[001]方向に沿った酸化物イオンの拡散経路が可視化されていることである。酸化物イオンは[100],[010]または[001]方向に沿って最近接のサイトに3次元的に移動する。安定位置付近では酸化物イオンが<111>方向へシフトするのに対して、拡散経路は<100>方向に沿っているというのはおもしろい。既往の研究では困難であった、拡散経路の可視化が本研究により実現した。我々はδ-Bi_2O_3とCeO_2において<100>および<111>方向に沿った拡散経路を示唆した。本研究では<111>方向に沿った拡散経路は見られず、<100>に沿った拡散経路のみが明確に可視化された。この不規則構造と拡散経路が高いイオン伝導度の原因となっているのであろう。
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