研究概要 |
本研究では,血液,体液,細胞培養液等と直接接触して用いられる医用材料に対して構造制御や表面修飾を施し,体液中に含まれる無機イオンやタンパク質等,生体機能分子種の吸脱着反応制御を試み,各種哺乳類細胞の接着・増殖・分化・活性を評価し,表面構造と関連づけることを目的とした。 ・タンパク質吸着抑制分子の固定化 γアミノプロピルトリメトキシシラン等のバインダー分子を介して,天然多糖であるアルギン酸分子もしくはオルガノアルコキシチタネートを医用金属(TiもしくはSUS316L)表面に共有結合固定化した。アルギン酸構造中のヒドロキシル基を利用してスルホン酸基やメチル基などを修飾・導入を試みた。スルホン酸基やメチル基などのアルギン酸構造中への導入が困難であり,γアミノプロピルトリメトキシシランと反応していないアルギン酸構造中のカルボキシル基の残留を考慮して,以下の諸物性の結果を考察した。 ・表面構造解析と血漿タンパク質との相互作用 接触角法,X線光電子分光法,フーリエ変換赤外分光法,原子間力顕微鏡を用いて表面修飾層の構造を調べ,γアミノプロピルトリメトキシシランと反応していないアルギン酸構造中のカルボキシル基の残留量を定量した。表面修飾した試料を血漿と接触させ,表面に吸着したタンパク質の量や構造変化を高感度反射フーリエ赤外反射分光法(FTIR RAS)によって調べた結果,カルボキシル基の残留量がタンパク質の吸着量に影響することを明らかにした。 ・血小板細胞の粘着性評価 ヒト多血小板血漿に短時間接触させ,表面に粘着した血小板の数で評価する。血小板が活性化された様子は偽足形成で判断した。オルガノアルコキシチタネート修飾よりもアルギン酸修飾によって血小板粘着が大幅に抑制された。血小板細胞以外の細胞の接着性や増殖性について現在検討中である。
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