SiCが導電性を示すことに注目して、電気泳動堆積により、SiC織布を電極として、はじめに繊維コーティングとなる物質を均一に堆積し、次いで、繊維織布の間隙を埋めるためのマトリックス材料であるSiCを堆積させ、それを用いてSiC長繊維強化SiC複合材料を作製するプロセスを開発することを目的とし、下記の成果を得た。 1)電気泳動堆積装置の試作およびカーボン被覆の作製:直流定電圧発生装置、カーボン電極を用いて、電気泳動堆積装置を組み立てた。次いで、SiC繊維であるチラノ繊維の2次元織布を対向電極とし、被覆材となるカーボンの微細粒子の懸濁液を調整し、溶媒の濃度、電極間距離、電圧等を系統的に変化させて電気泳動を行った。その結果、1%懸濁液を用い、100V/mm程度の電位差により、10分間で約0.5μmのカーボンが堆積することが分かった。 2)連続電気泳動堆積実験:マトリックス材となるSiCの堆積の有無を、溶媒の種類、電圧を系統的に変化させ検討した結果、10%懸濁液を用い、100V/mm程度の電位差により、30分で十分な量のSiCが織布上に堆積することが分かった。 3)ホットプレスによる複合材料の作製と複合材の評価:(2)により得られた堆積後の織布と、別途SiCスラリーを用いて作製したマトリックスシートを交互に積層し、ホットプレス法にて焼結体を作製した。焼結温度を1700℃及び1750℃、圧力を40MPa、焼結時間1時間とした。その結果、いずれの温度でも密度は2.6g/cm^3程度であり、緻密化は不十分であった。一方、得られた複合材はいずれも非脆性的な破壊を示した。なお、複合材の繊維含有率は23〜30vol%程度であり、最大強度は40〜90MPaであった。 4)反応焼結法による複合材の作製:(2)により得られた堆積後の織布を用いて、1450℃でSiを含浸させる反応焼結法により複合材を試作した。
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