研究概要 |
生体適合性材料への応用の基本となる安定自己組織化膜形成能が期待される末端官能基化含フッ素チオールの一般合成法の確立を検討した。 本研究における有機材料開発の基盤出発物質は3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,8-オクタンジオールである。この化合物は、以前市販されていたが、現在、入手が非常に困難になっておりその合成法の確立を検討した。市販品は高圧エチレンガスを使う工業的なプロセスを含む方法で合成されており、実験室的に安全に合成できる方法を検討した。1,4-ジョードペルフルオロブタンと酢酸ビニルとの水-アセトニトリル混合溶媒中での亜ジチオン酸ナトリウムを開始剤とするラジカル付加反応と引き続く付加生成物の水素化アルミニウムリチウムによる還元反応により合成可能であることを明らかにした。 得られたオクタフルオロオクタンジオールはモノp-ニトロベンジル化、キサントゲン酸エステル化を経て末端に官能基変換可能なニトロベンジルエーテル基を持つ含フッ素チオール誘導体の合成に成功した。同様な方法でカルボキシル基を有する含フッ素チオールの合成も行った。 p-ニトロベンジル体のトルエン希薄溶液を、数種の遷移金属(金、銀、チタン、クロム)を表面にスパッタしたガラス基板を浸漬し、反応後の基板表面を蛍光X線分析することでチオールの自己組織化膜(SAM)化能を検討した。クロム基板試料ではクロムの高い反応性からチオールの選択的SAM化は観察されなかったが、金・銀・チタンでは選択的な自己組織化膜の形成が確認された。銀・チタン基板試料を24時間水中に浸漬して放置しても、対照試料として使用したドデカンチオールSAM試料に比較して消失量が少なく期待したような含フッ素チオールの効果が示された。
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