研究課題
絶縁性の材料に、直径100μm程度の微細な流路を設け、流路の両端に挿入した電極から電流を流すと、流路断面積が減少した部分に電流が集中し、溶液が沸騰、ガス化し、さらにプラズマが発生する。このスペクトルの定量から簡単に極微量溶液の超高感度元素分析が可能である。本プラズマの素性を学術的に明らかにしていくために、プラズマの短時間分光診断と数値シミュレーションを行った。本年度得られた結果を以下に示す。(1)プラズマの短時間分光診断電流波形から、泡の発生は電圧パルスを印加してからおよそ200μm後、プラズマの発光はさらに300μm後に起こることがわかっている。50ppmのCd、硝酸0.1M水溶液にてプラズマの発光を測定すると、OHの発光の立ち上がりが、500μs、立下りも500μsであった。それに対し、Cdの発光は、OHより100μs遅れて立ち上がり始め、ピークを迎える時間は、OHの発光がピークを迎える時間より、およそ200μs遅いことがわかった。これは、OHは気泡中に最初から存在している水蒸気が分解してできるのに対し、Cdはプラズマが立った後、プラズマが水面をたたくことによってプラズマ中に入ってくるためと考えられる。(2)プラズマ発生の数値シミュレーションプラズマを再現よく発生させるには、その前の気泡を再現よく発生させることが重要である。気泡の発生位置を安定化させるためにはどのような流路形状、電圧条件が良いか調べるため、気泡発生前の流路内の温度上昇と泡の核発生数値シミュレーションを行った。その結果、気泡の発生位置と時間に関してほぼ実験結果を再現できる結果を得た。シミュレーション結果より、現状の形状では、泡の発生は流路の入り口と出口の角の部分に集中してしまうこと、流路の中央部を5%ほど狭く設計することにより、これを回避して、流路の中央部に固定できることがわかった。
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