研究概要 |
大気中での放電プラズマを作る条件を実験的に調べた前年度の結果に基づいてプラズマトーチを試作し,Fe_2O_3ナノ粒子を使って還元実験を行った。 内径2mmの円筒形容器内の中央に外径660μmのタングステン針を保持して電極にし,これに垂直な300μmの小孔を持つ銅板を対向電極とした還元用トーチを試作した。タングステン対向電極と対向電極の距離を1mmとし,最大電流1mAの直流電源で10kVの電圧を印加して電極間で放電を起こさせた。放電開始後に,ナノ粒子をHeまたはHe+10%H_2のガスでタングステン針と同軸に,0.51/minで流す。対向電極の下部10mmの位置に基板を設置し,小孔から噴き出した粒子を捕集した。なお,還元トーチと粒子捕集用の基板は,不活性ガス雰囲気のガラス容器内に設置している。約30秒間,ガスに乗せて粒子を送ってから放電を止めて捕集用基板を取り出した。 ナノ粒子は基板上の直径1mm程度の円内に堆積しており,ガス流に乗って運ばれたことがわかった。直径0.3mmの小孔を通っており,プラズマ放電炎を通過しているはずである。光学顕微鏡観察により,HeおよびHe+10%H_2を使ったいずれの実験でも,赤っぽい原料のFe_2O_3ナノ粒子の一部に白いナノ粒子が観察された。基板に堆積した粒子は,ナノ粒子ではあるが10μm〜50μm程度に凝集しているものが大半である。しかし,白い粒子は数μm程度の小さいものが多い。白い粉末は原料のナノ粒子には見られないものであり,放電により部分的にせよ還元された可能性がある。しかし,細かく分散した粒子の一部が白く見えているに過ぎず,その割合は非常に低い。 これまでの研究では,プラズマトーチにより還元されたことは確認できなかった。確認のためには例えばSEMの試料室に直接移動できるチャンバーを取り付け,この中で還元をし,大気中に暴露することなく観察,組成分析を行えるようにする必要があると思われる。
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