研究概要 |
現在最も高性能な永久磁石としてNd-Fe-B磁石が知られており,焼結法で作製された磁石では400kJm^<-3>を越える高い最大エネルギー積が報告されている.しかしながらこの値は理論限界に非常に近く、これ以上の磁気特性の向上は期待できないのも事実である.本研究では,代表者らが開発した無容器プロセス技術を駆使することにより、従来に変わる新しい磁石として,Nd_2Fe_<14>Bハード磁性相とα-Feソフト磁性相がナノサイズに分布したナノコンポジット磁石の創製を目指している.17年度は,試料組成としてNd_<10>Fe_<85>B_5,Nd_<12>Fe_<86>B_6,Nd_<14>Fe_<79>B_7を基本とし,これからFeとBの変化させたNd_xFe_<100-x-y>B_y(x=10,12,y=7,10)についてドロップチューブによる実験を行った.結果は,Bの含有量をわずかに多くしたNd_<10>Fe_<83>B_7およびNd_<12>Fe_<81>B_7組成では,試料直径が小さい場合には,準安定相のNd_2Fe_<17>B_xがわずかに生成したが,直径が400μmまで減少しても,Nd_2Fe_<14>B相とα-Fe相が多く残存した.また,準安定相は,冷却速度が大きいためかNd_2Fe_<14>B相とα-Fe相への固相分解は見られなかった.さらにB含有量を増加させたNd_<10>Fe_<80>B_<10>およびNd_<12>Fe_<78>B_<10>試料では,直径が400μmの試料でも,殆どがNd_2Fe_<14>B相とα-Fe相から構成され,準安定相は僅少であった. これらの結果から分かることは,ナノコンポジット磁石の前駆体としての利用が可能な準安定相を得るためには,ボロンの含有量を制限し,Nd:B=2:1程度にする必要があること,また,サイズの大きな初晶α-Feが組織中に残存すると,ナノコンポジット磁石の保磁力を低下させてしまい,期待通りの磁気特性を得られないこと.したがって,初晶α-Fe相の生成を抑制するような組成の最適化,例えば鉄含有量の減少や,第四元素の添加などについても同時に検討することである.次年度はこの線に沿って実験を進める.
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