研究概要 |
本研究は,金属単体が持つ赤,黄,白以外の色彩をもつ合金や従来の金属・合金より鮮やかな色彩の合金を創出することを目的とする。本年度は,当研究室で開発したCu-Ga合金の色彩の鮮やかさに注目し,その組成による色彩変化を調べ,DV-Xαで求めた状態密度との比較を行った。 粒状のCuとGaを所定量秤量・混合し,高周波炉により炭素るつぼ中,約1300℃で融解,炉冷して固溶合金試料を作製した。この試料を#320から約#16000相当まで研磨した。つぎに,分光光度計を用いて反射率測定を行い,反射スペクトルから10度視野,紫外線を含む昼光D65下での三刺激値を求め,xy色度図を用いて色彩の定量化を行った。試料の組成分析はXRFで行った。さらに,DV-Xα法を用いて,作製した合金組成に対応するCu-Ga合金の状態密度計算を行った。 CuにGaを添加するにつれて,Cuの赤色が徐々に薄くなり,Cu-7at%Ga付近にて黄色を呈した。さらにGaをその固溶限である20at%付近まで添加していくと,黄色の色味が順次濃くなった。また,反射率は,Ga添加につれて可視域全体で約10%低下し,吸収端の位置が波長約600nmから550nmまでシフトした。xy色度図上のプロットは,Cu-5%Gaまでは連続的に移動し,Cu-7%Gaを境にして不連続に,その後再び連続的な移動を示した。 状態密度計算の結果,Ga添加につれてCuの3dバンドの位置が低エネルギー側にシフトした。また,3dバンドのピークが順次下がり,スペクトルはブロードな形に変化した。この3dバンドのシフトは,光の反射波長領域を拡大し,吸収端を短波長側に移動させる,また,ピークの低下は,吸収がなかった波長領域で吸収を生じせしめ,反射率の低下を引き起こすと予測できる。これらの予測は,実際の反射スペクトルの変化と一致しており,このことは,合金化によって状態密度の変化をコントロールすることにより,多種の色彩合金を作製できる可能性があることを示唆している。
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