パン、麺、ビスケットやケーキなどの小麦粉を原料とした加工食品は多数あるが、注目すべき成分は脂質(油脂)である。一般に油脂は酸化されやすく、好ましくない臭いや味が生成され食品の価値を著しく低下させるので、油脂の酸化防止には脱酸素剤や包装材料など多くの工夫がなされてきている。一方、ある種の乾燥食品においては脂質(油脂)が非常に安定化されることが知られているが、その機構は不明である。本研究では、これらの小麦粉を原料として加熱あるいは乾燥により製造した食品における油脂の安定性を加熱・乾燥操作における移動現象と食品科学的なミクロな物性解析により解明する。 1)乾燥速度に対する脂質の添加効果 マルトデキストリンとリノール酸を高速かくはん混合させて調製したエマルションは非常に安定であった。このエマルションを乾燥させたところリノール酸の添加により乾燥速度が低下した。乾燥後の製品形状はリノール酸添加のものが柔軟性を長期維持した。 2)脂質の酸化実験 非接触・非破壊で酸化速度を決定するために酸素センサーを密閉容器内に設置し、容器内の試料を一定温度で加熱したときの空気中の酸素濃度変化を測定した。センサーの安定性に問題があり長時間連続測定が困難であったので、一定時間ごとに水につけておいたセンサーを差し込むことにより測定する方法を検討した。この方法では比較的ベースラインが一定する結果を得た。この方法と標準のPOV法などの結果を検討したところ一定の対応が確認された。
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