研究概要 |
研究最終年度にあたる本年度は,昨年度に引き続き,(1)伝熱促進が水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出反応速度へ及ぼす影響を検討し,(2)実際に粒子充填層内ヘナノ材料を添加し,伝熱促進効果が得られるかについて検討した.(2)について詳しく説明すると,(理論上の)熱伝導率が1200W/mKと非常に大きいカーボンナノチューブ(CNT)を用い,これを粒子充填層(モデル実験としてガラスビーズを用いた)へ添加した.単純に粒子とCNTを混合させるだけでは粒子間隙や壁面近傍の空隙にCNTを配置できず嵩高くなるだけであるため,いったんCNTを液中に分散させ,この混合液とガラスビーズを混ぜて乾燥させる手法により複合化を行った.CNT添加量と有効熱伝導率・壁面の熱伝達係数を温度応答計測により求めた.この結果,粒子径0.1mmの粒子充填層にCNTを約7vol.%添加することで約0.31W/mKから約0.67W/mKまで2倍程度有効熱伝導率を促進できた.さらに,先ほどよりも10倍直径が大きい粒子径1.0mmの粒子を用いて検討したところ,粒子径01mmの場合と同じ添加量であるにもかかわらず有効熱伝導率を約4倍に促進できた.これは,充填層に用いる粒子サイズが大きい場合,空隙のサイズも大きくなるため,CNTによる伝熱促進がより効果的であったためである.ここで,CNT添加量が比較的少ない場合,有効熱伝導率はほとんど変化しなかったが,約2.5vol.%以上で大きく向上がみられた.よってこの点においてCNTの伝熱促進効果が表れ始めたと考えられる.同様に充填層一容器内壁問の熱伝達係数についても検討したところ,何も添加しない場合,100W/m^2K程度であったが,有効熱伝導率の場合と同様に,CNT添加量が約2.5vol.%以上で効果があらわれ始め,結果として数倍から10倍程度以上に向上できた.
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