本年度は、高温・高圧水中でのバイオマスガス化による水素製造のための触媒開発を中心とした研究を行った。難分解性であるバイオマスモデル物質のリグニンに関して、Ni/MgO触媒を用いて超臨界水中でのガス化反応について検討した。 反応温度400℃の超臨界水中にて、Niを含まないMgOのみを存在させた場合には、リグニンの分解とそれにともなう再重合が進行し、ガスはほとんど生成しなかった。これは、MgOがリグニン骨格を分解する効果があることを示している。担持Ni量を変化させた実験を行った結果、担持Ni量が多いほどガス化率が増大した。これは、Niが超臨界水中においてリグニン分解物への水添ガス化を進行させる効果を有することを示している。反応の経時変化を測定した所、反応時間180分程度にて炭素基準ガス化率が約80%と極めて高いガス化率となり、本触媒が超臨界水中でのリグニンガス化に有効であることがわかった。なお、ガス組成は水密度0.3g/ccの場合でメタン:二酸化炭素:水素=5:4:1程度であった。次に、水密度の効果について検討した。その結果、ガス化率は水密度に対して極大値を有し、最適水密度が存在した。これは、反応物増大による反応促進効果と圧力増大によるガス生成抑制効果の双方によるものと考えた。 また、上記検討に加えてパラジウム合金を用いた高圧水素透過膜作成も行っている。現在、高圧水素透過膜評価システムおよび流通式超臨界反応装置の開発を進めている。
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