メタンから水素及び芳香族化合物を誘導するメタンの脱水素芳香族化反応は、天然ガスの有効利用という立場から注目されている。我々は、脱水素反応を平衡の制約を解除しつつ効率よく進行させるため、脱水素触媒と水素吸蔵合金をハイブリッド化し、周期操作によって反応分離場を持続させる「PSA(圧力スイング吸着)反応器」を提案している。効率的な反応系の設計には、触媒と水素吸蔵合金の組み合わせの最適化が不可欠である。本研究では、メタンの脱水素芳香族化反応を促進するための反応メディアとして、触媒にMo/HZSM-5を、水素吸蔵材料に金属チタンを組み合わせた。触媒は常法により4wt%のMoを担持したH-ZSM-5を用い、水素吸蔵材料としては、市販のチタン超微粒子を用いた。反応には内径10mmの石英製反応管を用い、触媒およびチタン粉末を充填した。反応器入り口に切り替え弁を設け、反応ガス(メタン)と、スイープガス(アルゴン)を交互に、適当な時間間隔で切り替える単塔型PSA反応器とした。 チタン共存時、メタン供給開始時に25-30%の高い反応率を示し、1時間程度でチタンのない場合の定常値に漸近した。これは、チタンに水素が吸蔵される効果により、反応が促進され、吸蔵量の増加とともに効果が減少するためと考えた。水素吸蔵能は、アルゴンパージにより回復するため促進効果は再現され、PSAサイクルを繰り返すことで同様の経時変化が持続できた。1晩アルゴンパージを行った後、反応を再開したところ、顕著な活性の低下は認められなかった。パージ時間を延長すると促進効果は向上し、4時間のパージを行うことにより40%の最高反応率を得た。
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