抗体アンカーリング腫瘍細胞と共培養した樹状細胞が、予防的な抗腫瘍応答を有効に誘導するかを検討するために、抗体アンカーリングEL4腫瘍細胞と共培養した樹状細胞をマウスに腹腔内投与した後に、EL4腫瘍細胞をマウス背部皮下に移植した。腫瘍細胞移植後の生存日数は以下の通りであった。PBS(-)を投与したコントロール系では、腫瘍細胞移植後29日以内に全マウス(4匹)が死亡した。腫瘍細胞(-)と共培養した樹状細胞を投与した系では、36日以内に全マウス(4匹)が死亡したのに対した。これに対して、抗体アンカーリング腫瘍細胞(BFA)と共培養した樹状細胞を投与したマウスは、95日後でも約6割(7匹中4匹)のマウスが生存していた。このように、抗体アンカーリング腫瘍細胞(BFA)と共培養した樹状細胞を投与したマウスに、腫瘍正着拒絶応答、延命効果が得られた。 腫瘍細胞と共培養した樹状細胞投与による抗腫瘍応答が長期的記憶応答であるかを検討するために、腫瘍細胞と共培養した樹状細胞をマウスに腹腔内投与した後に、EL4腫瘍細胞をマウス背部皮下に移植し、腫瘍細胞移植後95日間生存したマウスに対し、再度EL4腫瘍細胞を背部皮下移植した。未処理のマウスに再移植と同程度の腫瘍細胞を移植した場合の生存日数が23日間であったのに対して、抗体アンカーリング腫瘍細胞(BFA)と共培養した樹状細胞を投与したマウスは、腫瘍細胞再移植80日間延命させることに成功した。以上の結果より、腫瘍細胞と共培養した樹状細胞を投与することによって、腫瘍細胞の正着を拒絶し生存したマウスは、その後も再移植腫瘍細胞の正着を拒絶し、生存する傾向があることが示唆された。これは、樹状細胞投与によって、抗腫瘍免疫応答が誘導され、記憶免疫応答が確立されたことを示唆する結果であると考えられる。
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