我々は、これまでに、磁化する素材を用いた直径数ミクロンの磁気盤約10万個を1cm画に規則正しく配置させた磁気チップを作製している。このチップに磁気ビーズ標識した細胞を添加し、磁力により吸引させ、チップに付着させた細胞と細胞間相互作用を行なわせ、単一細胞レベルで多数の細胞の細胞間相互作用を網羅的に解析するシステムの構築を行った。 まず、富山県工業技術センターにて製作された磁気チップを用い、直径4μmあるいは50nmの磁気ビーズにて標識したマウスリンパ球を磁気チップへの結合をさせることができるかを解析した。その結果4μmのビーズはチップ上の磁気盤に吸引されたが、50nmの磁気ビーズは吸引されなかった。また、用いた4μmの磁気ビーズが蛍光を発することが観察された。磁気ビーズの蛍光は測定の際のバックグランドノイズとなるため蛍光を発しない50nmのビーズを用いて細胞を磁気チップに吸着させる条件を現在検討している。平行して、磁気チップを用いたBリンパ球活性化の検出システムの開発を行った。鶏卵リゾチーム(HEL)特異的抗体遺伝子トランスジェニックマウス由来Bリンパ球を用い、この細胞に磁気ビーズを吸着させた状態で、HELで刺激し、カルシウム応答を観察したところ、抗原刺激による細胞内のカルシウムの応答を観察することができた。また、磁気チップ上でHELを膜表面に発現させた細胞を培養する条件を検討し、チップ全面に細胞を付着させることができるようになった。今後、上記HEL特異的抗体を発現したBリンパ球を用い、磁気チップ上で細胞間相互作用を行わせ、細胞の活性化を検出する条件を検討していく。今後の課題として、細胞に結合しなかった磁気ビーズをどのように細胞から効率よく分離することができるか、また、磁気チップの磁力の強さをどのようにして向上させるかを検討していく必要がある。
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