本研究は、雷起因の電磁波が引き起こす放射線帯からの高エネルギー電子の降下によって、低地球軌道を周回している衛星が帯電する可能性を調べることを目的とする。地球各地での雷の発生頻度を調べ、各発生場所の磁力線を辿って降下高エネルギー電子のフラックスを算出する。それに基づいて低地球軌道の各場所での予測される帯電電位を計算し、科学衛星等で計測されている帯電状態との相関を調べて計算結果を検証する。また、具体例として、2003年10月に発生した地球観測衛星みどり2号の事故(後述)が雷に起因した帯電であったかどうかを検証する。 今年度は、低地球軌道を周回している米国のDMSP(Defense Meteorological Satellite Program)衛星の観測データの統計解析を行った。DMSPは高度830kmの極軌道を飛行する衛星群からなっており、解析に用いたデータは1983年から1992年にかけて6機の衛星で観測された30eVから30keVの電子のエネルギー分布である。各衛星は1秒毎に20のチャンネルに分けられた各エネルギーの電子のフラックスを計測しており、観測点は地球全域をほぼ網羅している。あるエネルギー以上をもつ電子フラックスとなる確率密度分布関数を全経度、全緯度、全時間において計算した。高エネルギー電子フラックスの高い領域として、ブラジル沖の南大西洋とオーロラ帯域があることが確認された。今後は、これらの地域以外で特異な電子フラックスを示すデータがあるかどうかを調べ、その時に雷活動が活発であったかどうかを調べる。
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