本研究は、雷起因の電磁波が引き起こす放射線帯からの高エネルギー電子の降下によって、低地球軌道を周回している衛星が帯電する可能性を調べることを目的とする。地球各地での雷の発生頻度を調べ、各発生場所の磁力線を辿って降下高エネルギー電子のフラックスを調べる。それに基づいて低地球軌道の各場所での予測される帯電電位を計算し、科学衛星等で計測されている帯電状態との相関を調べて計算結果を検証する。 今年度は、World Wide Lightning Location Network(WWLLN)を用いた2003年10月の全地球範囲での雷発生データ、日本国内の1996年から2001年の雷発生データについて解析を行った。ウィスラー波との相互作用が起きやすい中緯度で発生した雷に注目した。ある一定以上のピーク値をもった雷が発生した時に、米国のDMSP(Defense Meteorological Satellite Program)衛星が発生地点から遠くない領域を飛行していた時にDMSPで観測された降下電子量に違いがあるかを調べたが、雷単発の影響を明らかに見いだすことは難しかった。そこで雷が頻発していたことが予想される2005年7月〜8月のハリケーンカトリーナ等の大型ハリケーンが米国に到来していた時期に着目した。その期間のWWLLNのデータを入手し、雷発生時にアメリカ上空を飛行していたDMSPが観測していた降下電子量を調べた。個々の雷発生に対応して降下電子量が大きく変化しているイベントを見つけ出すことはできなかった。そこでアメリカ上空の電子フラックスの平均値がハリケーン時と静穏時で違いがでるかを調べた。ハリケーンカトリーナの時には1keV以上の電子フラックスが平均値を超えていたが、ハリケーンエミリーの時には特に変化がなかった。
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