研究概要 |
本研究では,鉱山汚濁水防止のための新しい方法としてキャリアマイクロエンカプセレーシヨン(Carrier Micro Encapsulation, CME)を提案する.本法は,地殻中に存在するTiO_2などの鉱物中のTiを有機キャリアで水に可溶化して,汚濁水発生源となる黄鉄鉱FeS_2などの表面に吸着させた後,キャリアを分解して汚染源鉱物をTiO_2薄膜で被覆し,水や空気から遮蔽するものである.本年度は,CMEの原理を確立することを目的として一連の研究を実施した.まず,キャリア候補物質として芳香族系化合物5種(フェノール,カテコール,レシルノール,ヒドロキノン,ピロガロール,ヒドロキシヒドロキノン,フロログルシノール)およびクエン酸回路物質6種(クエン酸,フマル酸,2-オキソグルタン酸,L-リンゴ酸,コハク酸,'オキサロ酢酸)を選定し,そのTiO_2溶解能について検討した.カテコール,ピロガロール,ヒドロキシヒドロキノンおよびクエン酸はTiO_2中のTiを錯体として可溶化した.次いで,これらの物質を使って可溶化したTiの黄鉄鉱表面への吸着について,振とうフラスコ吸着実験,サイクリックボルタンメトリ等の手段で調べた.酸化困難なクエン酸をキャリアに用いた場合,Tiは黄鉄鉱に吸着しなかったが,カテコール,ピロガロール,ヒドロキシヒドロキノンは黄鉄鉱上で酸素によって酸化分解され,Tiを黄鉄鉱に吸着させた.SEM-EDX分析の結果,カテコールをキャリアとしてCME処理を施した黄鉄鉱粒子の表面にTiとOが存在することが確認され,有機キャリアを用いたCMEで黄鉄鉱表面にTiO_2あるいはTi (OH)_4被膜を生成できることが示された.
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