研究概要 |
ラドンおよびトロンの壊変過程に高エネルギーベータ線を放出する核種が存在することに着目した.その核種であるBi-214あるいはBi-212の生成量をシミュレートしたところ,ラドン,トロンいずれの場合も測定開始後約200分で極大値を示し,その後低下することがわかった.この減衰過程の傾きから半減期を求めると,ラドンの場合は91.8時間,トロンの場合は10.7時間となった.つぎに,ラドンとトロンの計数比を変化させた場合は,初期では半減期の短いトロンの影響で勾配は大きいが,その後,半減期の長いラドンの影響で緩やかとなることがわかった.そしてその曲線の傾きはラドンとトロンの比によって決定されることがわかった. ラドンの捕集には,種々検討した結果,光透過性があり屈折率の大きい多孔質ガラス吸着剤が適していることを見出した.測定には,汎用性の高い液体シンチレーション計測装置を使用した.その結果,発生するチェレンコフ光を測定することにより,ラドン,トロンの測定が可能であることを見出した. これらの結果より,(1)検出素子は多孔質ガラス吸着剤であり冷却して用いることにより空気中のラドン・トロンを吸着濃縮できる,(2)吸着剤には透明で屈折率が高い石英質の多孔質ガラスを使用する,(3)液体シンチレーターを使用しないためトルエンなどの有害有機廃液がでない,(4)アルファ線スペクトルメータなどの特殊な装置ではなく汎用的な液体シンチレーション計測装置で測定が可能である,(5)娘核種ではなくラドン・トロンを直接捕集するので実際のラドン・トロン濃度の測定が可能である,(6)減衰時間の違いからラドンとトロンの区別及びその混合割合が測定可能である,(7)検出素子は吸着したラドン・トロンの娘核種の減衰を待つことにより繰り返し使用が可能である,などの特徴を有することが明らかとなった.
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