前年度での合成法の検討の結果をもとにさらに合成法を改良した。硝酸ニッケル六水和物、過酸化水素水及びアンモニア水を超純水に所定量溶解してpH6とし、周波数100kHz、出力600Wの超音波を3時間照射することで試料を合成した。生成物を吸引濾過・洗浄し、120℃で72時間以上乾燥した。X線回折測定(XRD)及び赤外吸収測定(IR)を行い同定を試みた結果、試料は結晶性の低いNi(OH)_X(NO_3)_<2-X>であることを明らかにした。さらにマッフル炉で3時間、250℃で熱処理すると、電気化学的に活性なNiO試料が得られた。XRDからScherrer式により結晶子の大きさは約3.5nmと見積もられた。SEMより二次粒子径は小さいものでは200nm程度だが、多くは数pmに凝集していることがわかった。電池用電極として評価するために、活物質:導電助剤(アセチレンブラック):結着剤(PTFE)を75:20:5(wt%)の割合で混合し、集電体の銅メッシュに圧着して作用極とし、対極及び参照極にはリチウム金属を用いた。電解液として1M LiC10_4 (in EC:DME=50:50 vol%)を用いて三極式セルを作成し、様々な電位走査速度及び走査範囲でサイクリックボルタンメトリー(CV)を行った。走査速度0.1mVs^<-1>走査範囲3.4〜0.7V(vs Li^+/Li)で測定したCV曲線において、1サイクル目では0.95Vの還元電流ピークが見られ、2サイクル目以降は1.15Vの還元電流ピーク、1.42V及び2.22Vの酸化電流ピークが見られた。これらのピークはNiの還元及び酸化に起因すると考えられ、また1サイクル目0.95Vの還元反応による生成物が可逆に反応することを示唆した。 本研究での超音波合成により、電極材料として従来は不適だと考えられてきたNiOが、可逆に充放電が可能であることが示された。今後は、本萌芽研究を発展させ、さらなる微細粒子の合成、また導電助剤との複合化を行い、高速充放電に適したNiOの合成を目指していく。
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