研究概要 |
トレニアのin vitro重複受精系を用いた解析から,花粉管が助細胞の分泌する誘引物質に反応するためには,母体の胚珠が分泌する花粉管反応性獲得促進物質「AMOR」が必要であった。これは,花粉管ガイダンスにおける新しい細胞間コミュニケーションに関わる物質であると考えられる。そして詳細な生理生化学的な解析の結果,このAMORが70kDaのタンパク質であることを明らかにした.当初はヤリブ試薬と共沈することから,AMORは細胞間シグナリングに関与することで知られるアラビノガラクタンタンパク質AGPの一種であると予測した.しかし,AMORは化学的脱糖鎖処理後もSDS-PAGEによってサイズの変化がみられないため,それ自体は糖鎖をほとんど持たないことが明らかとなり,さらなる検討によってAMOR自体はAGPではなく,他のAGPと何らかの相互作用をする可能性が示唆された.これまでにAGPと相互作用するタンパク質の知見は全くないため,この結果はAGPの作用機構という観点からも興味深い.トレニア由来のタンパク質であるAMORの同定にはアミノ酸シーケンシング解析が最適と考えられるため,現在はそれに必要なサンプル量を確保するための抽出方法を確立し,解析に向けて準備を進めている最中である.また,AMOR遺伝子同定後の解析や,今後の重複受精分子機構の解析には不可欠であるトレニア形質転換系の立ち上げを,ほぼ完了させた.
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