研究課題/領域番号 |
17657023
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60144135)
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研究分担者 |
岩口 伸一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (40263420)
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キーワード | 不完全酵母 / 接合型遺伝子 / 核相変換 / 二形成 / Candida albicans / 遺伝子破壊 / 染色体喪失 |
研究概要 |
有性生殖環をもたない不完全酵母Candida albicansでパン酵母の接合型遺伝子座とよく似た接合型遺伝子座MTLが5番染色体上に座乗していることがゲノム計画から明らかとなった。一方、本研究者によって発見されたC.albicansの核相変換(二倍体と四倍体との相互変換)の現象や、酵母型増殖と菌糸型増殖間での二形性の形態形成にもMTL遺伝子が関与しているのではないかとの作業仮説のもとに、核相変換株NUM51株を用いてMTL遺伝子座の存在する5番染色体を喪失させる実験と、MTL遺伝子破壊実験とを行い、MTL遺伝子の核相変換への関与を証明することを試みた。PCR法から、NUM51株のMTL遺伝子座にはMTLaとMTLαとがヘテロ接合で存在することが判明した。C.albicansのソルボース非資化性が資化性に変異する際には、5番染色体の一方が喪失する場合があることを利用して、NUM51株から5番染色体の一方を喪失させた株を分離したところ、MTLαの対立遺伝子が座乗した染色体のみのヘミ接合体が得られ、核相変換能が著しく低下すること、C.tropicalis用に開発された培地での菌糸増殖能が失われることが判明した。パルスフィールド電気泳動法とサザンハイブリダーゼーションから、NUM51株ではMTLaの座乗する方の5番染色体が短くなっており、このことがMTLaのみとなったヘミ接合体の得られない理由であることも示唆された。そこで、MTLαの遺伝子破壊株の分離を試みたところ、MTLa破壊株B1が得られ、その表現型はやはり核相変換能と菌糸増殖能との著しい低下を示した。よって、MTL遺伝子座においてMTLaとMTLαとがヘテロ接合状態で存在することが核相変換と酵母型増殖から菌糸型増殖への変換に必要であることが強く示唆された。今後は、5番染色体の一部を欠失したC.albicans株やMTLa破壊株の分離を行い、作業仮説の妥当性を証明する予定である。
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