研究概要 |
精子分化過程において、体細胞分裂を行う精原細胞が減数分裂を開始する機構は未解決である。我々はこれまでにイモリ精巣培養系を用いて解析した結果、減数分裂開始のチェックポイントが精原細胞の第7世代にあり、FSHとプロラクチンの濃度比によって調節されるという仮説を構築した。我々は,精原細胞の減数分裂開始のintrinsicな機構を解析し、体細胞に減数分裂を誘導することを目的として,イモリ精巣cDNAのマイクロアレイを作成し、FSH存在下の器官培養(減数分裂開始する)で発現する遺伝子の中で、精原細胞のみで発現する遺伝子を単離した結果、RNA結合タンパク質(nRBP)を見出した。RNA結合タンパク質は一般にmRNAの翻訳、プロセシングなどに関与していることが報告されており、分裂酵母でMei2pが減数分裂前のDNA合成と第一減数分裂の開始に不可欠であることが知られている。 nRBPはN末端側に高度に保存された2つのRNA認識モチーフを含むRNA結合ドメイン(RBD)、C末端側に非常に多くのグリシン残基からなるドメイン(GRD)を有する約19kDaのタンパク質で、イモリ精巣において後期精原細胞の細胞質で高く発現し、PRLによるアポトーシスの進行に伴って著しく減少した。さらにイモリ生殖細胞核を用いた無細胞系の実験でnRBPの機能を解析したところ、PRLにより引き起こされる核の断片化がnRBP存在下では抑制された。以上の結果からnRBPは標的RNAとの相互作用を通じて精原細胞でのアポトーシスを抑制している可能性が示唆された。今後、nRBPや他のFSH反応遺伝子を精原株細胞や体細胞の株細胞に導入することによって,減数分裂開始に必要な遺伝子を単離、同定する予定である。
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