1.period2本鎖RNAを合成し、10μM・207nl投与したタンボコオロギ終令幼虫の活動リズムを、光電式アクトグラフを用いて長期間にわたり計測した。その結果投与した8個体のうち7個体で活動リズムが無周期となり、ピリオドグラムでもリズムが検出されなかった。この無周期状態は、3週間以上にわたって継続した。残りの1個体ではリズムが継続したが、その周期は正常個体に比べ、非常に長かった。 2.period2本鎖RNA(10μM)207nlもしくは621nlをタンボコオロギメス成虫腹部に注射し、産下された卵から艀化した幼虫の光周反応を長日条件(明期16時間:暗期8時間)下で検討した。これらの幼虫発育には2通りが観察された。すなわち、約70%の個体はほぼ長日型の発育を示し、艀化後約70日までに羽化した。しかし、残りの30%はきわめてゆっくりと成長し、100日を越えて羽化が始まり、すべてが成虫になるまでには120日以上を要した。この幼虫発育パターンは恒暗条件下でのパターンに類似しており、2本鎖RNAにより光周測時機構の機能欠損が引き起こされた可能性が高い。 3.これらの、period2本鎖RNA投与個体群の、羽化が早いグループと遅いグループの、羽化後の活動リズムを計測したところ、いずれのグループも活動リズムそのものは発現するが、正常個体に比べきわめて不明瞭であった。タンボコオロギの光周感受期は幼虫初期(1〜2令期)であるので、今後この時期の活動リズムを検討する必要があるが、この結果は、period RNA干渉により時計機能が低下し、その結果として光周測時機構の機能不全が生じたと解釈された。
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