研究概要 |
コロニーサイズは昆虫社会の多様性を解明する鍵はあるとされるが,ではアリやシロアリがいかに所属コロニーのサイズを「認識」しているのかは全く未知である.そこで、トゲオオハリアリを用いコロニーサイズと相関のある各種刺激に対するアリの行動的反応を観察し、可能なフィードバック機構の作業仮説を提案した。トゲオオハリアリでは予備研究で女王(gamertgate)の巣内パトロール時間がコロニーサイズとともに変化することが突き止められており(大コロニーで長いパトロール)、また女王ワーカー双方とも個体間の直接接触で相手(繁殖者か否か)を認識し(Tsuji et al.1999 Anim.Behav)女王との接触が一定時間以上途絶えたワーカーは自ら繁殖すべく生理状態を切り替えること(オーファン化)も知られている。オーファン化したワーカーに接触した女王がパトロール時間を延長させることが裏にあるフィードバック機構(パトロールが行き届けばオーファン化率も低下)であるとする作業仮説を立て、これを実験的にテストした。トゲオオハリアリでもしオーファン化ワーカーの存在が女王のパトロール行動を活性化する刺激なら、コロニーサイズでなく単にオーファン化ワーカーの比率を操作するだけでパトロール時間が延長されるはずである。実際、オーファンワーカーの率が増加させると、パトロール時間が延長することが確認された。また、女王はオーファンワーカーや卵巣を発達させた優位ワーカーをそうでないものと識別している証拠も示された。この識別の鍵刺激が身体表炭化水素であるとする生物検定による確固たる証拠も得られた。今後はこのフィードバック機構を定量的にテストするため数理モデル化する予定である。
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