伊豆-小笠原弧の海底火山(水曜海山)やマリアナ背弧海盆の深海熱水噴出孔で採取した熱水/海水の混合試料から、0.2ミクロン以上の懸濁物画分と0.1〜0.2ミクロンの懸濁物画分(すなわち極微小生物画分)を取得し、それぞれからバルクDNAを抽出して、原核微生物の系統分類に汎用されるバクテリアとアーキアの16S rRNA遺伝子をPCR法により増幅した。増幅産物について50個前後を単離し、その近全長塩基配列を決定した。16S rRNA遺伝子の結果、バクテリア・アーキアともに未知の系統群に属する遺伝子配列(phylotypes)が多数発見され、0.1〜O.2ミクロンの懸濁物画分(極微小生物画分)が新規微生物の宝庫である可能性が示唆された。特にバクテリアでは「そこに生息しているが培養された例がない」(viable-but-nonculturable)VBNCと称される微生物の代表例であるcandidate divisionという推定上の細菌門に属する16S rRNA遺伝子が顕著であったほか、アーキアでは生物進化の系統樹の根元近くから「深く分岐している」(deep-branchng)と形容される16S rRNA遺伝子が見つかり、極微小生物の中に現生の生物に 「最も近い共通祖先」(last umiversal coumon ancestor、 LUCA)に迫る可能性のあるphylotypesが含まれている可能性が示唆された。この結果をまとめた論文が専門学術誌に印刷中であるほか、そのようなphylotypesのコレクションを引き続き拡充する予定である。
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