研究課題
アミロイドβペプチド(Aβ)は、39〜43残基からなるペプチドでありアミロイド線維となることでアルツハイマー病を引き起こす。低温環境で生息する魚類がもつ不凍タンパク質RDIIIは氷結晶の成長を妨げる機能を有する。前年度までの研究により、RDIIIはAβのアミロイド線維形成を阻害することが示されている。本研究では、RDIIIタンパク質がどのようにアミロイド線維形成を阻害するのかについて核磁気共鳴(NMR)等の手法を用いて研究する。1.RDIIIタンパク質の主鎖連鎖帰属前年度に引き続きRDIIIの^<13>C/^<15>Nラベル体を準備した。得られた^<13>C/^<15>Nラベル体を用いて、HNCAやCBCANHなどのNMRスペクトルを測定し主鎖連鎖帰属を行りた。主鎖連鎖帰属は従来の方法を用いて行った。2.RDIIIタンパク質とAβの相互作用解析RDIIIの^<15>Nラベル体を使って、RDIIIとAβの相互作用解析を行った。Aβモノマーが存在する条件下において^<15>Nラベル体のHSQCスペクトルを測定し、AβフリーのHSQCと比較した。その結果、ケミカルシフトやピーク強度に有意な変化は認められなかった。しかし、これら2つのNMRサンプルを低温で2週間以上インキュベーションすると、Aβ存在下におけるRDIIIのN末端10残基程度にシグナル強度の変化が認められた。Aβは、モノマー状態で長時間インキュベーションすると凝集して短い線維(線維核)となり、さらにAβモノマーの結合が進み伸張することによってアミロイド線維になることがわかっている。長時間のインキュベーションによってAβ存在下のRDIIIにスペクトル変化が生じたのは、RDIIIが線維核に結合していることを表していると考えられる。
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