質量分析法による構造解析はデータベースに依存し、網羅性が低く、定性情報が無い等の欠点があり、タンパク質の翻訳後修飾のような、データベースの無い、部分的にヘテロな成分の分析には適さない。抗体法は、配列特異性の無いものが少なく未知試料に適応しにくい。本研究では、抗体法や質量分析法の補完をする方法としてアミノ酸組成分析を原理したウエスタンブロットしたタンパク質試料の翻訳後修飾を検出、定量する方法の開発を目的とした。まず、アミノ酸分析の高感度化の可能性を示すために、アミノキノリルカルバミル誘導体化法(AQC法)を用いた進藤らの方法を改良してアミノ酸の検出限界を調べた。この結果ほとんどのアミノ酸は通常のカラムで5fmolのピークを検出でき、50fmol程度で定量が可能であった。カラムのミクロ化、キャピラリー化によって更なる高感度化が望める。実際の分析ではタンパク質の加水分解の制限(外来からの汚染やアミノ酸の安定性)がボトルネックになる。PVDF膜上のタンパク質の加水分解も行ったが、標準タンパク質(牛血清アルブミン)で100fmol程度では構成アミノ酸量を定量可能であったが、他の方法と比較する上では更なる検討が必要である。また、メチルリジンなど16種の翻訳後修飾で得られる特殊なアミノ酸の溶出位置を確認し、完全分離はできなかったものの、特有の溶出時間が得られた。タンパク質からの翻訳後修飾の検出においては、卵白アルブミンを標準タンパク質として使用し、PVDF膜上のタンパク質からN型糖鎖に由来するN-アセチルグルコサミンとリン酸化アミノ酸であるホスホセリンを検出できた。これらの翻訳後修飾は残念がなら加水分解に不安定であり、特殊な加水分解条件(6N塩酸、気相法、105℃、7h.)が必要であった。今後、特殊なアミノ酸を酸加水分解に安定な誘導体化するなど定量的に検出できるよう改善が求められる。
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