本研究では、NF-κB活性化因子の網羅的スクリーニングを目的として、まず、NF-κB応答性のE-selectin遺伝子のプロモーターの制御下に、それぞれネオマイシン耐性遺伝子、Green fluorescence protein(GFP)遺伝子、CD14遺伝子を発現するレポータープラスミド3種を構築した。構築したプラスミドを、ブラストサイジン抵抗性遺伝子とともに、interleukin(IL)-3依存性の浮遊細胞であるBa/F3に導入し、ブラストサイジン存在下で数週間培養することにより、stable transformantを十数種類樹立した。また、NF-κB活性化を惹起するレトロウイルスの陽性コントロールとして、Toll-like receptor及びIL-1 receptorの下流で機能するアダプター分子MyD88のN末端側、さらに陰性コントロールとして同分子のC末端側のcDNAを、pMY-IRES-GFPレトロウイルスベクターに導入した。本年度は、これらのレトロウイルスベクターをPlatE細胞に遺伝子導入後、それぞれの遺伝子を発現するレトロウイルスを含む培養上清を回収した。これらの培養上清をそれぞれ、先に樹立したネオマイシン耐性のレポーター遺伝子を導入したBa/F3細胞由来stable transformantに感染させ、ネオマイシン存在下で培養し、レポーター遺伝子発現株の選択を試みた。その結果、一つの株で、MyD88のN末端側を発現するレトロウイルス感染時に特異的な生存が観察された。従って本法は、NF-κB活性化因子の網羅的スクリーニング法として有効であることが示唆された。今後の課題として、スクリーニング効率の上昇を目指した、レポーター遺伝子自身や、スクリーニングに用いる細胞株の更なる改良が望まれる。
|