研究概要 |
今年度は,特定単一神経細胞内での転写因子をmRNAレベルおよびタンパク質レベルで定量解析する方法を開発することを試みた.mRNAはreal-time PCR法の応用により,最小10コピーのmRNAがあれば定量できることがわかった.すなわちmRNAはそれ自身が増幅できるので容易に高感度で定量が可能となる.一方で,タンパク質そのものを増幅させる方法は存在しない.したがって,極微量のタンパク質を定量するためにはシグナルを増幅させるしか方法はないが,現時点では線形で増幅させるのが精一杯である.そこで極微量タンパク質の超高感度測定法として,酵素サイクリング法と酵素免疫測定法(ELISA法)とを組み合せて,超高感度化を目指すことを始めた.酵素サイクリング法では,反応が繰返される度に,過酸化水素が蓄積することになる.この過酸化水素を検出して定量測定する.この時点での過酸化水素の蓄積反応は直線的でしかないが,標識酵素にトリオースイソメラーゼを用いることにより,基質をサイクリング反応系に継続的に追加することができ,その結果,過酸化水素の蓄積反応は幾何級数的に増大することがわかった.ただしこれまでの結果では,酵素サイクリングのターンオーバー数は理論値の50%近くまで出たが,抗体に標識した酵素のターンオーバー数が理論値にはるかに満たなかった.来年度は,酵素サイクリングのターンオーバー数をさらに上げると共に,抗体に標識した酵素のターンオーバー数が極端に低い原因を解明する.そして,単一神経細胞内での定量ができるようにする.
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