研究概要 |
ES細胞を胚様体形成法により分化させると管腔構造を形成するが、内腔になる部位の細胞にアポトーシスが起こることが知られている。我々は腎臓形成に必須の核内因子Sall1を発見したが、そのファミリー遺伝子all4はES細胞に多く発現し、受精卵の初期発生に必須であることを明らかにした。さらに、Sall4-/-ES細胞では、胚様体作成時に管腔構造を形成せず、ヘテロマウスでは、アポトーシス異常に特徴的な表現型を示した。Sall4の結合蛋白の探索の結果、核蛋白のPARP-1を発見したが、PARP-1はカスパーセ3の基質であり、同時にカスパーセ非依存性アポトーシスにも関与しているため、Sall4を中心にES細胞とアポトーシスの関連を解析を行った。 まず我々PARP-1、Sall1、Sall4の全長と変異コンストラクトを作成し、結合実験を行った。その結果全長Sall1,Sall4はともに全長PARP-1と結合した。またSall1,Sall4では、その酵素活性部位ではなくDNA結合部位がPARP-1と結合することがわかった。次にSall1,Sall4自身がPARP-1の基質であるかを確認したところ、両者ともにpoly-ADPリボシル化されており、同時にそれら自身がPARP活性の標的であることがわかった。 一方、主要なアポトーシスの経路に、カスパーセ経路と非カスパーセ経路があるが、種々のアポトーシス惹起物質を用いて人為的にES細胞にアポトーシスを起こさせてみた。その結果、ES細胞では過酸化水素によるPARP-1依存性の非カスパーセ経路でアポトーシスを起こすことが出来た。しかしカスパーセ経路依存性経路のうち、エトポシドではアポトーシスを起こすことが出来たがTNF-αではアポトーシスが起きないことがわかった。また、Sall4-/-ESでは正常ESに比べて過酸化水素への感受性が顕著に亢進していることがわかった。この際のカスパーセ3活性を測定したところ、活性化されていないことがわかった。
|